キネマの星座外国映画2007年ベスト
1位:リトル・ミス・サンシャイン
駄目な人というか、人生を生きるのに不器用な一家の3日間を描いたロードムービー。人生を勝ち負けでしか判断しない、夢見がちな父親、空軍への入隊という夢をかなえるために無言の行を貫く息子、おデブちゃんなのにちびっ子ミスコンを夢見る娘、ヘロイン中毒で老人ホームを追い出された祖父、同性の恋人をライバルに奪われたことで自殺未遂した学者のおじさん、そしてそんな家族を守ってるんだか、諦めてんだかよくわからん母親。。
ハリウッドお得意のファミリー・ドラマに仕上がってるのだが、オフビートにスクリューボールコメディ風味を加えて「泣ける話」にはしていない。登場人物を美化するわけでなく、世の中をくさすことなく、日常に潜む、小さな奇跡を丁寧に描いていた。
ミスコン会場の庭でドウェーンとフランクのやり取りがこの映画の言いたかったことだろう。ドウェーンは「ミスコンはクソだ。でも世の中はもっとクソだ。そう思わないか?」とフランクに言う。フランクはにっこり笑って「今日はよく喋ったな」と語りかける。そして二人はミスコン会場に戻っていく。世の中はクソかもしれない。でもそこで生きるしか仕方ないのだ。彼らはどうにもそこに馴染めないのだが、それでもいなければならないのだ。自分の居場所は自分で主張してつかまねばならない。今の自分でだ。それがラストでくっきりと描かれる。
爆笑ではなく、断続的に続く笑いに誘われて少ししんみり。そしてもう一回見たくなる、そんな作品である。ラストで感じる爽快感が見事。
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2位以下は題名のみ
2位:パンズ・ラビリンス
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3位:ブラックブック
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5位:ドリームガールズ
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6位:題名のない子守唄
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24位:バベル
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29位:あたたかな場所(第14回大阪ヨーロッパ映画祭にて上映)
30位:傷だらけの男たち
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総評としては、2007年は大作での傑作が少なく、佳作ながら、味わい深い作品が多かったように思う。もっと言うなら、誰が見ても面白いと思える作品はあまりなく、結構好き嫌いが分かれる。「リトル・ミス・サンシャイン」にしてもラストが明るくなくて厭だ、という人もいたしね。異形の神様を巡るメルヘンを戦争の影の中でドライに描いた「パンズ・ラビリンス」、戦時における、生き残るための個々の闘争を小気味よく描きだし、人間の生きる力を描いた「ブラック・ブック」、クリストファー・ウォーケンにジョン・トラボルタ(母さん)を夫婦にした、パワフルなミュージカル「ヘアスプレー」、ステージ、ドラマをすべてミュージカルでつないだ、全身これ肝な「ドリーム・ガールズ」、「マレーナ」に引き続いて自らのド変態ぶりを惜しみなくさらけ出すジュゼッペ・トルナトーレの手に汗握るサスペンス「題名のない子守唄」、歌だけがすべて、すべてを欲しがり、そしてすべてを捨て去る、恐ろしい”業女”エディット・ピアフの生涯を描いた「エディット・ピアフ 愛の讃歌」、第二次大戦時のフランス軍として戦った植民地からの義勇兵を群像劇として描いた「デイズ・オブ・グローリー」、一人の男が変わっていく様を淡々と描き、そうした積み重ねが歴史であり、時代の流れであることを感じさせる「善き人のためのソナタ」、ものすごく馬鹿なストーリーを金かけてしっかり遊んだ「プラネット・テラー」は印象に残る作品だ。11位以下では「ピンチクリフ・グランプリ」や「シッコ」がよかったが、10位に入った作品に比べると今年は褒めたい映画はあまりなし。